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盛岡地方裁判所 昭和46年(わ)95号 判決 1971年10月29日

主たる事務所

水沢市字東町三三番地の一

医療法人社団今野医院

右代表者理事長

今野五十雄

本籍

水沢市字横町六番地

住居

同市字東町三五番地の一

医療法人理事

今野淑子

昭和二年五月一八日生

右の者らに対する法人税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官本間達三出席のうえ審理をし、次のとおり判決する。

主文

被告人医療法人社団今野医院を罰金三〇〇万円に、被告人今野淑子を懲役六月に処する。

被告人今野淑子に対しこの裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人医療法人社団今野医院は、水沢市字東町三三番地の一に事務所を置き、医療等の業務を営み、被告人今野淑子は、同法人の常務理事としてその経理を担当していたものであるが、同被告人は、同法人の業務に関し、法人税を免れようと企て、

第一、昭和四二年四月一日から同四三年三月三一日までの事業年度において、所得金額が二一、八四八、九四七円で、これに対する法人税額が七、四三六、八〇〇円であるのにかかわらず、公表計理上診療収入の一部を除外するとともに架空経費を計上する等の行為により所得を秘匿したうえ、昭和四三年五月三一日水沢市新小路三三番地所在の水沢税務署において、同税務署長に対し、所得金額が九九四、八九一円で、これに対する法人税額は二七八、三〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて不正の行為により右事業年度の法人税額七、一五八、五〇〇円を免れ、

第二、昭和四三年四月一日から同四四年三月三一日までの事業年度において、所得金額が二六、三一五、三四二円でこれに対する法人税額が八、九九八、三〇〇円であるのにかかわらず、前同様の行為により所得を秘匿したうえ、昭和四四年五月三一日前記水沢税務署において、同税務署長に対し、所得金額が三、四四八、五四〇円でこれに対する法人税額は九九五、八〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて不正の行為により右事業年度の法人税額八、〇〇二、五〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

被告人今野淑子及び被告人医療法人社団今野医院代表者今野五十雄の当公判廷における各供述のほか、第二回公判調書中証拠関係カード記載の一乃至三二〇の証拠と同一であるからこれを引用する。

(法令の適用)

被告人今野淑子につき、法人税法一五九条一項(懲役刑選択)、刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(第二の罪の刑に加重)、二五条一項一号

被告人医療法人社団今野医院につき、法人税法一六四条一項、一五九条一項、刑法四五条前段、四八条二項

(量刑事由)

被告人医療法人社団今野医院は、理事長を医師今野五十雄とし、その妻被告人今野淑子が常務理事として同法人の経理事務等を担当していたものであるところ、その子弟の医科大学への入学資金、家族の生活保障及び医院の設備費用を取得する目的で、故意に収入の一部を帳簿類に記入せず、あるいは架空の経費を計上する等して得た所得を、架空名義または無記名で銀行預金をしてこれに対する法人税をほ脱したもので、その手段方法は計画的であり且つその金額も二年度合計一五、一六一、〇〇〇円の多額にのぼるもので、その動機において斟酌すべき点がないではないにしても、医の倫理が問い直されている現状に待つまでもなく極めて遺憾な行為といわねばならない。ただ、被告人らは本件犯行の非を認め、法人の経理をあらためるとともに修正税額及び多額の重加算税をすべて納付ずみであること等の事情を考慮し、主文程度の刑を科するのを相当と認める。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 立川共生)

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